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15年全米オープンの総評

全米オープンテニス(US Open Tennis Championships 2015)は、大会第1シードのノバク・ジョコビッチ(Novak Djokovic、セルビア)が6-4、5-7、6-4、6-4で第2シードのロジャー・フェデラー(Roger Federer、スイス)を下し、幕が下りた。

(1) 錦織の1回戦敗退
(2) セレナの敗退
(3) ジョコビッチの優勝

(1) 錦織の1回戦敗退

錦織全米2015

錦織本人にとっても、錦織ファンにとっても、非常に辛くて悔しい初戦敗退になってしまいました。
対戦相手ペール選手の調子は良かったが、勝つチャンスはあった。マッチポイントを握っており、勝利は目前だった。ペールは、試合中どんどん調子を上げ、ポイントごとに気合いがみなぎっていた。勢いがあった。
フォアハンドのギャンブル的な強打は、ことごとくコーナーに入った。ミスを恐れず、積極的に打った。
錦織は、押さえるべきポイントを取れなかった。
相手のギャンブル的プレーに押されて、自分のプレーが狂った。
本来は、自分が多く取るべきエースを、相手が多く取っていた。
試合前に錦織が想像していた試合展開と大きく異なっていただろう。
自分のショットは悪くないのに先に強打をされ、展開される。
1回戦でなければ勝てていただろう。
全米のグランドスラムの雰囲気に、まだ慣れていない。
去年の成績を考えれば、決勝や準決勝進出を視野に入れた試合運びを意識していたはずである。錦織選手の目標はグランドスラム優勝だからである。
全米の1回戦としては最もタフな相手であったことは間違いない。
グランドスラムのプレッシャーも彼を襲った。プレッシャーで足が動いていなかった。
体が硬くなり、ショットの積極性も普段のツアーの彼と比べて明らかに消極的だった。
今年の彼は、グランドスラムで良い成績を残せていない。
明らかにプレッシャーの影響はある。自分自身でかけているプレッシャーと、外部からのプレッシャーの両方に影響を受けている。

来年の錦織選手に期待したい。これまで錦織は何度も皆の想像を裏切ってきた。錦織選手の近年の成長はすさまじいものがあります。彼の一番の武器は戦略戦術面です。彼の多彩なショットから編み出される戦術は、相手のプレーをつぶす。どうプレーしていいのかわからなくなる。そんなシーンを何度も見てきた。去年の全米準決勝対ジョコビッチ戦でも。
来年グランドスラム優勝できるはず。彼の成長は止まらない。

(2) セレナの敗退

ウイリアムズ2015年全米

年間グランドスラムに2勝と迫っていたセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)が、世界ランク43位でノーシードのロベルタ・ビンチに敗れる番狂わせがあった。すさまじいプレッシャーがあったはず。動きが固すぎた。相手のビンチのプレーはそれほど良いものではなかった。

 

セレナは、昨年のこの大会から、今年の全豪、全仏、ウィンブルドンとグランドスラム4大会連続で優勝し、この大会に、同じ年の4大大会をすべて制覇する「年間グランドスラム」がかかっていた。1988年にシュテフィ・グラフが達成して以来、27年ぶり史上4人目の大記録――第1試合ではペンネッタが勝っていたため、残るは2人のイタリア選手だったが、よもやビンチに敗れると考えたファンは、多くはなかっただろう。

ここまで4度対戦し、すべてセレナのストレート勝ち。しかも、グランドスラムの準決勝進出がセレナの29度(25勝3敗)に対し、ビンチは初めてという実績の差も大きかった。ここまでの試合でアンフォーストエラーが多かったセレナだけに、注目された立ち上がり、やはり硬さがあった。第1セット、第3ゲームのサービスゲーム、40-15から追いつかれ、4度のデュースの末に先にブレークを許した。そこから一気に5ゲーム連取、逆転で第1セットを奪い自信を取り戻したかに見えたのだが……。

「記録はまったく意識していない、プレッシャーはない」と言い続けて来たセレナだが、実際の胸の内は、そこからの試合展開に明らかだった。一気に勝負を決めるのではというスタンドの期待を裏切る第2セットの立ち上がりだ。

第1ゲーム、ダブルフォルト絡みで0-40と追い込まれ、ここはサーブ力で何とかかわしたものの、2-2で迎えた第5ゲーム、再び0-40とされるとここはブレークを許し、バタバタと落ち着きを失ってセットを落としてしまった。

163㎝、60㎏、32歳のビンチに決定力はない。ただ、シングルスではおよそ10年間トップ100を維持してきた経験、同じイタリアのサラ・エラーニと組んだダブルスでは生涯グランドスラムを達成している技巧派だ。サーブを食い止められ、守りに入ってラリー戦に持ち込まれると厄介になる。「ボールを返すことだけを考えていた」というビンチに、セレナの空回りが始まった。第1セットでは8本だけだったアンフォーストエラーが、第2セットには13、ファイナルセットには19と増えており、ビンチにすれば、打ち返すだけでポイントが入ってくる流れになった。

 

(3) ジョコビッチの優勝

ジョコビッチフェデラー全米2015年

フェデラーが予想よりも善戦した。

降雨により試合開始が約3時間遅れた決勝で、アーサー・アッシュ・スタジアム(Arthur Ashe Stadium)の観客がフェデラーに大きな声援を送る中、世界ランク1位のジョコビッチは4年ぶり2度目の全米オープン制覇を果たした。

34歳のフェデラーは、ここで優勝すれば1970年以降で最年長の全米オープン覇者になることができたものの、28歳のジョコビッチに敗れ、2012年のウィンブルドン選手権(The Championships Wimbledon 2012)以来となるグランドスラムのタイトルは、またしてもお預けとなった。

今シーズン、全豪オープンテニス(Australian Open Tennis Tournament 2015)とウィンブルドン選手権(The Championships Wimbledon 2015)を制したジョコビッチだが、全仏オープンテニス(French Open 2015)では決勝でスタン・ワウリンカ(Stan Wawrinka、スイス)に敗れ、惜しくも年間グランドスラム達成の夢は絶たれていた。

グランドスラム10度目の優勝は、米国のビル・チルデン(Bill Tilden)氏に並ぶ記録で、ロッド・レーバー(Rod Laver)氏とビョルン・ボルグ(Bjorn Borg)氏の優勝回数には、あと1つに迫っている。